「嗤う伊右衛門」

今更だが京極夏彦さんの「嗤う伊右衛門」を読んだ。京極さんは出会って感謝したい作家のひとりだけれどもたくさん読めないくせにあれもこれもと欲張るわたしなので、彼に関しては京極堂シリーズ以外の作品を読んだのは初めてなのだった。それにしてもシリー…

菊池寛

必要に駆られて菊池寛を読んだ。自慢できることではないが、わたしはいわゆる古典や名作をほとんど読んでいない。菊池寛もちゃんと読んだのは初めてかな? 少なくとも記憶には残っていない。 今回読んだのは新潮文庫の「藤十郎の恋・恩讐の彼方に」。文章が…

「のだめカンタービレSelection CD Book」

「のだめ」は雑誌で全部読んでしまっているので新刊といえども新しく読むところはないが、何度読んでもやはり面白い。でもCDBOOKについては買うつもりはまったくなかった。こういうものは勢いに乗って買ってもうまく活用できずに邪魔になることが多いし、二…

「世にも美しい数学入門」

「博士の愛した数式」*1の小川洋子さんが数学者と対談した本があるという書評をみつけて、いそいそと買ってきました。数学と数学を追う人生というものがいかにうつくしいかを数学者が小説家を前に語る本。わたしにとってなんて理想的な状況を呈した本なので…

白水社のこと

「家なき鳥」は白水社から出ている。白水社とのおつき合いは(って別に個人的な付き合いがあるわけではないけど)かれこれ15年ほどになる。大学に入ってヒンディー語を始めて、まず手渡されたのが「エクスプレス・ヒンディー語」白水社から出ている初心者向…

「家なき鳥」

インドの日常を舞台にしたヤングアダルト小説だというので興味を持って買った。作者はアメリカの詩人でヤングアダルト小説の作家だということだけれども、インドの生活の丁寧な描写が現実味を帯びて、インドの文芸映画を見ているような印象を持った。また、…

「家守綺譚」

本は文字を読めたらよいので文庫本があれば文庫本を、現在無くともそのうち文庫落ちするだろう作品はそれまで待って買うのが流儀なんだけど、この本は装丁があまりにうつくしかったので買ってしまった。 そして毎日、もったいないので少しずつ読み進めながら…

「リング」

ハリウッド版「ザ・リング」が意外とおもしろかった。原作の「リング三部作」のファンなのでいちおうのチェックというだけの意味で見て、きっと途中で退屈してやめるだろうと思っていたら、場面場面でそれなりにひきつけられながら最後まで見続けた。もちろ…

「失踪日記」

たいそう話題になっていたので買ってみました。わたしの年代でSFを噛っていて吾妻ひでおの名を知らずに通り過ぎている人はいないでしょう、などとえらそうに言ってみる。とはいえ、わたしは作品の前は通り過ぎてましたが。だから不条理もドタバタも好まな…

「博士の愛した数式」

わたしの能力が文字と言葉と文学に偏っていたので、長い間数学とは無味乾燥な学問だった。そこにどんなロマンも見出すことは出来なかった。長い学校生活の中でひたすら公式を「暗記」し続け、苦しめられてきた。 ずいぶんと大人になってから数字が独自の意味…

「東亰異聞」

今更だけど小野不由美さんの「東亰異聞」を読んだ。読み始めではあまりノリよく入り込めずに、それでもダラダラと進めていたが、途中で遅れて出てきた主要人物(中畑直)の登場によって文字通りパアッと光がさしたように世界が立ち上がった。彼の初めのセリ…

「夕凪の街桜の国」

こうの史代さんの「夕凪の街桜の国」を読んだ。最近あちこちで話題になっているのを目にしたのでタイトルは知っていたが、その表紙を見る限り、日常の話が綴られているほのぼのとしたところが受けているのかなと勝手に思って特に興味をそそられなかった。昨…

「魔法使いハウルと火の悪魔」

冒頭から「長女は出世しない」とか言われてなんじゃそりゃと思う。この現実にはない、作品の世界独自のルールがなんの説明もなくあたりまえのように出てくることに違和感を覚えるわたしは「ファンタジー者」ではないのだなぁと痛感した(こんな言葉はありま…

「オニババ化する女たち」三砂ちづる

2004.12.14の日記にも少し書いたけど、この本にいたく感動した。わたしはこの本に書かれている「今60代から70代の母親に育てられた20代から40代の子ども世代」にぴったりとあてはまる。そして、わたしに関して言えば、この本で問題とされていることはそのま…

ハリー・ポッター

第6巻が脱稿されたそうですね。うむ〜。わたくしのハリポタ進行状況はつい先日半分を過ぎたところ。何をどう半分かというと、英語版の第5巻の半分をやっと読み終えたってコトです。たまには、どかっと10ページくらい読み進められる日もあるけど、だいたい…

「少子」についての補足

あれから考えていたんだけれども、彼女の文章に対する違和感について。で、思い当たることがありました。「痛いのが怖い」はわたしの場合で言えば、「生きるのが怖い、辛い」に直結していたんですね。それはとても絶望的で差し迫った感覚でした。だから痛い…

「少子」酒井順子

薦められて、酒井順子さんの「少子」という本を読みました。酒井さんとは「負け犬」の人です。(右の画像はハードカバー版。わたしは文庫で読んだ) え〜と、言いたいことはよくわかった。わたしも「痛いのはいやだ」が激しくて、社会人になるまで歯医者には…

フェルメール「真珠の耳飾の少女」

世に特別な評価を持つフェルメールの作品に、わたしは全く共感するものがなく、実は困っている。昨今は自分の好みと離れていても、水準を越えた力を持つ作品には何らかの感慨を得ることができる鑑賞眼が育ってきたと思っているのに、こと、フェルメールに関…