菊池寛

必要に駆られて菊池寛を読んだ。自慢できることではないが、わたしはいわゆる古典や名作をほとんど読んでいない。菊池寛もちゃんと読んだのは初めてかな? 少なくとも記憶には残っていない。
今回読んだのは新潮文庫の「藤十郎の恋・恩讐の彼方に」。文章がわたしには読みにくいが、そこを堪えてじっくりと読むと、予想以上にエンターテイメントとしてきれいに成り立っていることがわかって面白かった。歴史的事実を踏まえながらそこに登場する人物の心理描写を作者の解釈で丹念に追う形で話が進む。話の運びがある一点で盛り上がり最後に落ちるまで丁寧にエピソードが仕掛けられており、よく出来ているなぁと感心する(文豪に向かってエラソウです)。教科書に載っている話は一絡げに、観念的なことをもやもやとしんきくさく書いている話ばかりかと思っていたけれど、そうでもないのね(あきらかに知識が偏っています)。
というかね、教科書で読んでいた頃のわたしは読解力がなかったのだと思う。だから時代がずれていて自分には読みにくい文章に阻まれてその作品のおもしろさにたどり着くことが出来なかったんだろう。いや、作品の心理描写に現れる人の心も、今だから共感できるのかな…? 
少なくとも同じ時期に同じ教科書を読んで文学に目覚めて読みまくる人もいるのだから、自分の不甲斐なさには哀しくなるけれども、だって、本を読むこと自体はほとんど生まれたときから好きだったんだよなぁ。なのに読むというほども読んでいない現状ってどうよ? 
まぁこれも与えられた能力の限界なのでしようがないし、とりあえずは、読んでいない名作がたくさん残っていてこれからの楽しみが増えたと思うことにいたします。
夏目漱石もほとんど読んだことがないけど、今読むとおもしろいのかな? 太宰治もちゃんと読んだことがない。谷崎潤一郎とか? そうそう三島由紀夫も。折りしも映画化されてるし。輪廻転生の恋の話なんですってね。シチュエーションはモロ好みダ。
「必要に駆られて」というのは、ちょっとした文学の講座に通っておりまして、そのテキストとして取り上げられたからってことです。菊池寛文学史上の位置など、ほとんど常識レベルの知識ではあるのだろうけれども、知らないわたしには面白いのです。