「失踪日記」

たいそう話題になっていたので買ってみました。わたしの年代でSFを噛っていて吾妻ひでおの名を知らずに通り過ぎている人はいないでしょう、などとえらそうに言ってみる。とはいえ、わたしは作品の前は通り過ぎてましたが。だから不条理もドタバタも好まないんだってば(この認識は間違っているかもしれんけど。なんせ読んでないし)。今、読んだらまた違う感想を抱くような気もするが、当時子どもだったわたしにはその面白さがよくわかりませんでした。それでも名前はファンであるが如く知っている(というほど浸透していたと言いたかった)。
で、絵は好きだったかもと思い起こし、とり・みきさん言うところの凄い実体験でありながらそれよりも漫画作品としての完成度が高いことが凄いというところ興味を引かれ読むことにした。
読んだ感想はものすごく心地よく読むことが出来ました。内容はこの上なく悲慘だけど、絵やセリフ運びの間が気持ちよくて何度もページを行き来してしまう。ただ話すだけで人の気を引くことが出来る悲慘な話を自己陶酔しないで突き放して芸(ギャグ)として出す。そこのところの徹底した技にシビレました。こういう誰にも何にもよらないで屹立した自己を支えつつ表現するストイックな創作態度が好きです〜(とはいえ、それ故に悲慘な状況に陥るともいえるから人生とはむつかしいですね)。
個人的に最もウケたのはやはりロリコンの警察官が「しゅたっ」と駆けつけるところですかね。「先生ほどの人がなぜこんな…」ってとてもまっとうなつっこみありがとうと思いました。ありきたりのツボですんません。