「仏教伝来の道 平山郁夫と文化財保護」


平山郁夫氏は、いろいろと評価の分かれる方のようだけれども、わたしは若い時分にとても気に入っており、関西で見られるあらゆる展覧会に行った。
世間の毀誉褒貶のうちの悪いほうの評価について、言われてみたら思い当たるなぁと思い、今のわたしのアートに対する向かい方からすると、むしろ否定する方面の作家なのかなと思ったりするわけだけれども、まだ批判精神の育っていない頃に集中して観たので、理性の奥に染み込んでしまって、わたしにとってはいいとしか言えないのであった。
それで、わりと長い間、葛藤を回避するために遠ざけてきたような感じがあったのだけれども、もう一度、ちゃんと観たいとも思っていた。
何年か前に、竹橋の近代美術館で大きな展覧会があった時は結局、行き損ねた。
亡くなった時に、回顧展があるかなと思っていたが、目立ったところではなかったので「あれ?」と思った。
で、今回、やっと行ったわけですが「文化財保護」というテーマと抱き合わせでないと展覧会が成立しないのかなぁとちょっと意外に思ったりするわけなのだった。わたしとしてはガンダーラの仏像なども一緒に観られるのはうれしいのですが。
で、今観ても、昔ほどの激しさはないにしても、やはり染みるかなぁ…。なにはともあれ、一本の線を描く一瞬に全存在を賭けることを行った人だと、わたしは改めて思った。
今も昔も、画面に漂うぼんやりとした空気感がわたしにはとてもリアルに感じられ、作品の前に立つと、絵の中に自分も居るような気分になるのが、好きな理由。
また、被爆体験による体調不良、死の瀬戸際で、それを画業に対する情熱と精神力で乗り越えたというエピソードに、当時強く感じていた存在の不安定さを、生きる意志で乗り越える人が実際にいるという事実に希望を見た、という個人的体験と結びついているため、良くも悪くも、自分のアルバムの中の思い出の写真を見るような、評価や批評とは離れたところにあるなぁと思う。
今日は時間の余裕があったので、リニューアルした本館でめぼしいものをざっと鑑賞。

舟橋蒔絵硯箱のこんもりとした形がとってもイカシてましたー。