プーシキン美術館展

中高生の頃に慣れ親しんで、美術を鑑賞する初めの体験となっているフランス近代絵画の主流を、今の目で観るとどう感じるか一度じっくりと見直してみたいと常々思っておったので、この展覧会はちょうど良い機会かと思い、行ってみた。
結論から言うと、わたしにとってはそんなに大きな感動はなかった。ルノワールやモネ、ドガセザンヌなど、馴染みの深い著名な画家たちの作品に、素通りするほど退屈ではないが、前に佇んで時が止まるというような感動はなかった。それでも、一枚だけあったゴッホ(「刑務所の中庭」)と何枚かあったピカソの中の一枚(「アルルカンと女友達」)はよかった。とくにゴッホは強い力でわたしを捉え、春にゴッホ展に行かなかったことが悔やまれた。この展覧会の目玉であるマティスの「金魚」は、マティスにしては(わたしにとって)目を引いたが、ざっと描きあげた風情なのが(それが画家の狙いだとしても)、やはりわたしには魅力的ではなかった。この三人を比較して、わたしの芸術観について思うところがあるのだけれども、もう少し歴史的背景を知ってからの方が良いかと思い、機会を改めます。
会場でもらった出品リストの

本展の油彩・グアッシュ・水彩作品は、フランス近代絵画の伝説的コレクター、セウゲイ・イワノヴィッチ・シチューキンと、イワン・アブラモヴィッチモロゾフの二人が蒐集した」となっており、続く解説の「シチューキンは自らの感受性を信じ、表現性の強い実験的、前衛的な作品を集めた。とりわけマティスピカソなど、当時はまだ無名だった作家を支えたことは広く知られている。一方モロゾフは画商の意見をよく聞き入れ、評価に値する名作を体系的にそろえた。激しさや表現力の強い作品よりも、セザンヌやボナールといった穏やかで装飾的な作品に特にひかれた

という記述が芸術についての人のかかわりかたの両面を的確に表していて興味深かった。
それにしても、とにかく人が多すぎて疲れた。今回はとくに人が多いことに疲れを感じる展覧会だった。もう少しゆったりとじっくりと鑑賞することが出来たなら、また違った感想になったかもしれないと思うと残念。平日の昼間であれだと、休日はどんなことになってるのかと想像するだけでオソロシイ…。