「プラネテス」

わたしは週刊モーニングを購読しているのでこの作品も連載時に読んだ。でもその時は今時とてもストレートな宇宙ものだなぁという印象があったくらいで強い感動はなかった。で、ある時新聞のテレビ欄の読者の一言コーナーでこれがアニメ化されていることを知り、その感想が「画像がとてもきれいで感動した」というものだったので、宇宙もので画像がきれいなら一度見てみるかと途中からアニメを見始めた。
はじめのころは「ふ〜ん、確かに画像はきれいだな」という程度の感想しかなかったが、多分「地球外少女」の回だったと思うけど、急にガツンと心に響いて、それ以後はのめりこんで観た。話は単純なんだけど、回が進むにつれて感情の元をこじ開けられるみたいに迫ってきて、最後の方は号泣。悲しいからという理由がなくてただ感動して泣くってのは気持ちいいもんです。ついでに原作の漫画もコミックで買って読み直してみたら、これもまた響く響く。人物造詣が暑苦しいなぁと思いつつ、宇宙の描写がすごくいいとあらためて気づいた。暗黒の宇宙を背景にした月面に宇宙服の人、といった場面の画が、まさに宇宙に見える。コーンとそこに空間が広がる。ああ、この人が宇宙を思う心、そこに見る風景、わたしといっしょなんだな、わたしが物心ついた時からずっと心に描いて空を見上げてSFを読み続けたのと同じものがこの人の中にもあるんだなと思ったら、あとは全部肯定して暑苦しい人物に巻き込まれて一緒に作品の中の未来を生きた。だいたいにして週刊連載で読むと作品から受け取るものの密度が下がるので、読み直す機会を持ててよかったと思う。
作品のメッセージは恥ずかしくなるくらいストレートに夢や希望や愛や、遠くへ行きたいという願望とここも実はその遠くなんだということにある時気付くということ、や何やについてであり、それを宇宙に進出する人間を描くことによって描く、って、そんな使い古された…というところなんだけど、でもそれが作者にとっての真実であり、それを誠実に追い詰めていっているからどこかで見たような話や画面であってもオリジナルなものとして、読むわたしを掘り起こすのだろうと思った。
アニメと原作では微妙に話が違い、特にタナベの性格が言っていることは同じなんだけどえらく変わっているし、わたしは原作のクールなタナベの方がそこはステロタイプでないのが気に入っているけど、アニメではタナベのあの性格が物語をひっぱっているのだからあれはあれで成功してるんだなと思う。宇宙を描くということと全ての人は幸せになる力を持っているという基本的なことは変えないで、でもアニメの方はもろもろの周辺の話がうまい感じに整合性を持って広がっていて、原作を読み終えた後でも見応えがあった。両方楽しめるのでお得感あり。
アニメの最終話でハチマキとタナベが宇宙に出て、地球を見てオーロラが見えて…という場面でそのうつくしさに感動しながら同時にその画面を「懐かしい」と思う自分を不思議に思う。わたしは決して見たことがないはずの風景。懐かしいと思うのは単純に宇宙に憧れてSF小説を読んでいた小さかった頃の自分に対する郷愁なのかなとも思うけど、あるいはそれは未来の記憶なのかもと思ったりする。いつかの未来に誰かが見た風景が現在のわたしに思い起こされる。存在と時間は巡り巡って全てがここに収束しているのかな?と。ええとつまりtrikalってきっとそういうことなのだと思っているのですが。
DVDを買おうかと思案中…。しかし一枚6,300円が全9巻…。うー。高い。気に入った巻だけ買おうかなと思ったりもするけど、これははずせんという話が分散してるし、今後もしやBOXが出たりしてそれを万が一買おう、と思ったりすると困るし…。もうちょっと考えることにいたします。