「トロイ」

DVDで「トロイ」を観た。公開されている時の評判で「神話的要素がいっさいない」と聞いて、え〜ギリシャ神話の話じゃないの? つまんないな、と思っていた。どうせなら、CGも使えるんだし、神さまがいっぱい出てくる話を見たいわと思っていた。それに不死身のアキレスは出てくるのに神話ではないっていうのもなんだか中途半端な扱いだなぁと。
というか、わたしはあの辺の話は軒並み「神話」だと思っていたのね。でもあの作品で描かれる出来事(トロイ戦争)は「史実」なのね?などと言いながらちょっと自信が無くなってきたので広辞苑を引いてみた。によると「トロイ戦争」は史実だけどアキレスは神話でアキレスがトロイ戦争に出てくるのはホメロスの創作、でいいのかな? 教養がなくてごめんなさい。
それで映画「トロイ」ですが。観たら「神話的要素がない」の意味はわかった。つまり完全に「歴史劇」として描いたってことなんだなと。アキレスも不死身の神の子ではなく、あまりにも強かったので神話的伝説として後の世に名が残った人間という扱いなのかなと。そういう意味ではブレがなくてわかり易かったので「アポロンは出ないの〜?」とブーイングしていた気分は収まった。そこで、壮大な話をわりと解かりやすくまとめたのは認めるし、ブラッド・ピットが40過ぎてすごい肉体の持ち主であることにも感心したけど、でももうちょっと人間ドラマを濃くできなかったんだろうかと思う。発端のパリスとヘレナ、あれではただのバカップルでは? いや歴史上もバカップルだったってことなんでしょうか? でもなぁ。例えばパリスだけがバカであまりに魅力的な敵将の妻を略奪したというならまだいい(でもヘレナ役の人、どう見てもそういう魅力があると感じられなかったのがまた痛い。気高くも神々しいわけでもなく、妖艶に耐えがたく誘われるわけでもなく。始めの方、モブの中に沈んでわからんかったし)。あるいは二人の愛が全てを凌駕するほどに燃え上がったと言うにはその過程がわたしにはまったくわからないので、なんじゃ、なんじゃ、なんじゃ?もうヘレナはトロイに居るんかい?という調子で話が進んでいくし、それでもいっそヘレナは何も考えられないバカだっていうならそれもよし、でもそういうわけではなく「自分のせいで…」とかいう感じで傷ついた顔してるし、パリスとヘレナの恋も純愛扱いっぽいし、なんだか全てが中途半端でようわからんかった。アキレスとパリスの妹姫の関係も盛り上がってるんだかなんだかよくわからんかったし。あの姫のキャラクターもうまく盛り上げたらいいドラマになると思うんだけどな〜。自分が巫女である立場、その大切な場所を徹底的に否定するアキレス、なのに惹かれてしまう、その煩悶、とかさ。というか、もしかしてそういう話だったのかな? でも画面からはそういうのは伝わってこなかった(わたしの観る能力が足らんのか?)
CGによる大船団などもなんだかうそっぽ〜い感じがつきまとうのはなんでなんでしょう。そこらへんに感心できたらそれを観るだけでも楽しめたんだろうけどなぁ。わたしが「つまんね〜」と思いながら観ていたから? まぁこれだけ文句をつけながら途中でやめずに最後まで観たのは観たので、そこそこは面白かったと言っていいのかな?でも映画館で観ていたら途中で寝てたかもな。
それで劇中でアキレスがしきりと神に対する不信を言う(アポロンに祈ったところで何もしてくれんとか)んだけど、あれって極めてキリスト教的な神に対する対峙の仕方ではと思う。あの作品の中ではそれで一貫していたから神をGODと変換して考えたら言いたいことはわかるけど、でもGODが存在するか否かと同じ文脈でアポロンは存在するか否かというのはちょっと違うと思った。だってアポロンは太陽なわけだから、居るも居ないも、太陽はいつも空にあるわけで、太陽が人間に恵みも災いも与えるようにギリシャ神話の神々は気まぐれに人間と関わりをもつわけで、キリスト教のように人間を許したり受け入れたりそういうのとはまた違うのだしなーと思ったことでありました。神に対するアキレスのような問いかけというのはそれはそれで興味深いけど、何もわざわざギリシア神話の世界でしなくても、もったいない、と思うのはわたしがキリスト教的考え方を受け入れていないせい?
監督のウォルフガング・ペーターゼンは「アウトブレイク」がわたしの中ではベストの作品のひとつなんだけど、その他の作品で「おっしゃ〜来た来た〜!」と思えたことがない。う〜ん、なんででしょ。
パリス役のもとエルフの王子様のことは好きなのでしょぼい役でも楽しく鑑賞した。表面的な事実がバカが原因で起こった戦争でも人間のあり様の掘り下げ方でおもしろい話になるはずだよなぁとそういえば山岸涼子さんの作品にヘレナがどうしようもない傲慢なでも美女ゆえに許されている女という話があったよな、あれは気持ちが良い話ではないけど面白かったなと思い出した。だから「トロイ」ではパリスとヘレナが変に物分り良くしているところがまた中途半端なんだなと、自分の欲望のみに忠実な傍若無人のバカであるとかもっとへたれっちいところに磨きを掛けてくれたりしてくれたら(まぁアキレスと決闘するあたりだいぶへたれていたが、むしろ決闘に出ないで逃げ回るくらいして欲しかった)
なんだかバカバカ書きすぎたかな…