「没後400年 特別展 長谷川等伯」 東京国立博物館

実は「松林図屏風」を、国立博物館の常設展示で観たことがある。本館の一角に「国宝室」というのがあって博物館所蔵の国宝がひとつずつ月替わりで展示されている。何年か前に偶然、「松林図屏風」が出ているのに出会った。部屋には国宝がひとつだけ。充分な空間の中、人も少なく、静かに、思う存分作品の前に佇むことができた贅沢な出会いだった。
というわけで、目玉の作品をすでに充分堪能した思い出を余裕に変えて、ちょっぴり気楽に会場へ。
だってねぇ・・・。ただでさえ、静かに、しかもできれば少し離れて観たい様子の作品なのに、人であふれる会場で観なくちゃいけないと思うだけで疲れるし。
国宝室で「松林図屏風」を初めて観たとき、わたしは等伯をよく知らなかった。どこかで(教科書か?)見たことがある有名な絵だなーと思ってから、じっくりと観始めて「これはすごい絵だなー」と思った。何がすごいって「幽玄」ってこれかーと思った次第。何かを表そうとしてそれが完全に表れているというのはこういう状態だと思った。その時、名前だけ覚えた。
その後、大好きな狩野永徳のライバルとして名前が出てきて、あ、あの人か、と思い出したりした。永徳が引き合いに出てくると、わたしは永徳ラブが強すぎて、変な話ですが等伯を軽く見る気分が出てしまい、しかし「松林図屏風」を思い出すと、他の作品も見たくなり、でも激しく盛り上がりもせず・・・どうでもいい話だけれども、そんな状態でテクテク上野まで行ったわけであります。
で。会場に入ったとたん、ぐわしっと心をつかまれました。
ああーーーー。なんか気持ちいい・・・。
想像していたよりも繊細で細やかな筆の動き。永徳のようなギリギリの緊張感はないのだけれども、きちんと狂いがない絵ばかりが並んでるー。絵から受ける印象がとても優しくて緊張がほぐれる。性根の優しい人と対面しているときみたいな心地よさ。混雑の中でも行ってよかった。
会場には午後四時ごろに到着したら入場制限中で40分待ちだったので、遅い時間のほうがマシかといったん引き上げて、六時前ぐらいに戻った(金曜日なので八時閉館)。さすがに入場制限はなかったが、まだまだものすごい混雑でガッカリだったが、まぁ仕方がない。でも、一度全部見てからもう一度第1会場に入ったら入場時間を過ぎていたため、だいぶ空いていてラッキー。とはいえ「松林図屏風」が展示されているあたりは閉館前でも人垣が途切れず、だった。


本日のサプライズ
観終わってエスカレーターを降りてきたら出口に人垣が。聞いてみたら美智子皇后が来館されるとの由。ちょっと興味がわいたが、閉館してからのことだろうし、その時まだ閉館まで少し間があったのでわざわざ待つほどの興味でもなく立ち去りかけたら、背後で拍手が。まだ会場内にも人がいたし、あんな無防備な中に(もちろん、警備の人やお付の人に囲まれているとはいえ)賓客来館があるとは思わなかったのでびっくりした。ああいうのって完全に閉館してからとか休館日とかにあるものではないんですかね?


今日の土産
本館のミュージアムショップにしばらくぶりに行ったら、ものすごく広くなっていて驚いた。2007年7月にリニューアルしたらしい。

「八橋蒔絵螺鈿硯箱」をかたどった缶入りクッキー。クッキーは東京會舘製。おいしいものが入っている点でもポイント高し。