「天璋院篤姫展」 江戸東京博物館

今年は大河ドラマを毎週楽しみに見ている。久しぶりのことです。
作品としての出来がどうとかそういう次元をパッと超えて、見ることで、そのままその世界に入っている(まさに入り込んでいる)と感じる作品に出会うことが、まま、ある。今年の大河ドラマ篤姫」はわたしにとってまさにそういう作品。批評する心とか楽しむという感覚さえ、見ているときには生じない。物語の起伏と同時にわたしもまたそのものを感じ、考える快感を得ている。
というわけで、前半の舞台である鹿児島にスッ飛んで行きたいところですが、それはすぐには実現できかねるので、手近なところで両国の江戸東京博物館の特別展「天璋院篤姫展」に行ってきました。会場は平日にもかかわらず盛況で、人の波に疲れましたが…。
展示は、絢爛豪華な嫁入り道具やそういうものがズラッと並んでいるのかなという予想に反して(そういう展示品ももちろんあるのですが)書状などが多く、全体に地味な印象だった。けれども、ひとつひとつじっくりと筆跡や内容(現代文訳がついている)を見ていくのがなかなか楽しいひとときで。
特に、島津斉彬の筆跡が意外に繊細な印象で、「薩摩藩の富国強兵に成功した幕末の名君(Wikipedia)」と聞いて想像していた一刀両断、大鉈をふるって改革を成したというよりも、緻密にいろいろと目配せしながらことを成した人なのかなーとそんな想像をするのが楽しかったわけです。写真のような(写実的な)肖像画のお顔も、強い意志の力を感じるよりも、常に思索をめぐらせているような機微の深さを感じて、筆跡と同じ印象だった。
篤姫はよく見る写真の通りの、意志の強い、姫にしては豪胆な感じそのまま…。幾島の申し開きの手紙とか、生々しくも生き生きとした人間模様が楽しゅうございました。