海老が来た

夫が職場から発砲スチロールの箱を持って帰ってきた。出入りの漁師さんにもらったという。カサカサ音がする。ふたを開けてビックリ。伊勢海老が三匹入っていた。思わず「ギャー」と叫んでふたを閉める(マジメな話)。いろんな思いが頭を巡る(こんなもん、どーやって料理すんの?? しかも、ものっすごく新鮮だしいいものだろうに、手に負えないわたしのせいでちゃんと味わえないなんてなんてもったいない、漁師さんにも申し訳ない、とはいってもありがためい…(以下自粛)…)
とりあえずネットで捌き方を調べてプリントアウト。しかし箱を開けてあったまってきた海老たちはかさこそかさこそ、がさごそがさごそ、だんだん元気になって、押さえようとするとすごい力で抵抗する。殻やヒゲが手に刺さって痛いの何の。とてもとても惜しいが、こんなものこのまま捌けるか〜と生食はあきらめて、もう一度ネットで今度は茹で方を調べた。
家でいちばん大きな鍋にたっぷり湯を沸かして、三匹とも放り込む。一瞬にしてまっかっかになる。濃い暗い赤だったのがオレンジがかった鮮やかな赤に。湯に入れて暴れだしたらどうしようと危ぶんだが、ほとんど動くことなく丸くなった。
茹でること20分。夕食はすでに済んでいたので、伊勢海老の塩茹でがデザート? 夜食? 酒でも飲むならあてだけど(夫は笑顔でビールを出してきた。いいなぁ)。
取り出して足の部分と胴の部分をぐりっとねじって引っ張ると大きな身が出てきた。足の部分の殻をキッチンバサミで切り裂いて、身を全部出す。全長に比べて食べられるところは少ないなぁと思いつつ、海老としては大きい身をほおばる。ぷりっぷり。甘い。残った頭のなかのみそをほじくりだして食べる。この頭も生のまま捌いていたら明日みそ汁に使えるのにと名残を惜しみつつ、ゴミ箱行きになった。
箱を片付けようと、保冷財だと思っていた新聞紙に包まれたものを手に取ると…金目鯛だった…。巨大な金目鯛が二匹。すでに時刻は午後10時前。普段なら一日の仕事を終えてまったりしているところなのに、今からこれを処理するのか…。ちょいとウンザリしつつ(せっかくの立派なもらいものに罰当たりな話デス)うろこが飛び散るのを避けるためにシンク周りのものを片付ける。とにかく大きいので内臓をとるのも一苦労、そして、ざーりざりざーりざり出刃でうろこをはがしにかかる。巨大な魚の表裏をひっくり返し、二匹分、繰り返し。腕が痛い。またもやいろんな思いが頭を巡る(明日は休みだけどこれで外食はナシか…。メシ作らねばならんのか…。それにしても二匹とも食べるのはムリなので一匹は冷凍するとしても、冷凍しておいて大丈夫なのかな? 内臓を抜いておけば大丈夫だよねぇ。一匹も明日まで冷蔵で大丈夫かな? 大丈夫だよねぇ)
それにしても何の罰ゲームやなどと文句を言いながらもなんとか二匹ともつるつるにして、一匹は冷凍するために切り身にしようと試みたが、わたしの腕では出来なかった。一匹丸々ラップにくるんで冷凍庫に入れて「一気冷凍」のボタンを押す。もう一匹もラップにくるんで冷蔵庫のチルドコーナーに入れた。
仕事はまだ終わらない。大量の内臓と海老の殻を処分。飛び散ったうろこをふき取り、伊勢海老関連の洗い物と金目鯛関連の洗い物。生臭くなったシンクを磨いて、掃除機もかけて、やっと終わり。
は〜疲れた。美味しい魚を食べられる喜びよりも、苦労と心配の方が先にたって疲れたよ。せっかく食べた伊勢海老の美味さももう忘れた…。