歯医者の話

昨日、歯科についてちょこっと触れたので、ついでにわたしの歯科体験について書き留めておこうと思う。他人にはどうでもいいことが長々と書かれているけれども、歯科に通うということはわたしのにとってはいかに痛みと恐怖を克服してきたかという歴史だったりするわけなので書いてみます。
現在は毎日約20分ほどのブラッシングをして、3ヶ月から6ヶ月毎の定期健診に通っているわたしは歯に関してのメンテナンスは完璧なんである。この先、歯医者で大変な思いをすることは二度とないと思う(と願っている…)。しかしここまでの道のりは長かった。
長い間歯医者に行くことが出来なかった。とくに大学時代はひどかった。四年間、ずっと「行かねば」と思いながら、結局行くことが出来なかった。やっと行ったのは就職して二年目くらいの頃。観念して職場の近くの評判が良い歯医者に行こうと心に決めて、一度、診療時間外にドアの外まで様子見だけのために行ってその日は帰り、次に行って、やっと、目をつぶって思い切ってドアを開けた。その時に、長い間懸案だった左の奥歯にクラウンを被せた。実は、この歯がわたしが歯医者に行くことをおおいにジャマしていたのだ。この歯は乳歯のときに既に生えてくる永久歯で、虫歯だらけだった乳歯が永久歯に生え変わったためにリセット出来たものの、生え変わらなかったこの歯だけはひどい虫歯のまま放置されて、この歯を直すためには必ず、脳髄まで響くような痛みを経なければならないことがわかっていたので、怖くて怖くて、長い間、歯医者は鬼門になっていたのであった。
もともと痛みに極端に弱いわたしなのに、初めての歯医者体験がよりによって、腕は良いが治療が荒いことで有名な医者だったらしい(母、談)。以来、何度行っても診察台の上で泣き叫び、治療は出来ず。体質的に歯があまり丈夫でないこともあって、小学校低学年まで口の中は虫歯だらけ。奥歯で物を噛むと染みるので前歯で噛んでいたようなかすかな記憶が…。その頃の感覚が染み付いているので、今でも奥歯でチョコレートなどを噛み砕く人を見ると「豪胆やなぁ」と感心する。
そうこうしているうちに歯が生え変わって、その頃には虫歯の怖さをいやっちゅうほどわかっていたので、歯磨きも怠らずにいたから、生え変わった歯に関してはそんなにひどい虫歯にはならなかった。しかし件のもともと生えていた永久歯が虫歯のままだった。
その後、小学校4年の頃に歯医者に通い始めたことがあった。きっかけは妹が歯医者に行ったから。わたしは臆病者だったけれども生来、ものすっごい負けず嫌いなのであ〜る。妹が行ったのにわたしが怖くて行けないでは姉の沽券にかかわる!というわけで、その時は怖いよりも負けず嫌いが勝った。そのまま治療してしまえたらよかったんだけれども、途中で引っ越して通えなくなり、中途半端なまま残された。以後、時々は行っていたが、なぜだったかはよく覚えていないが、引っ越してから通い始めた歯医者には中学高校と通じて長期休み(春休みとか夏休みとか)毎に通っていた。そして高校二年から三年の春休みに「受験が終わったら行こう」と思ってしばらく行かなくなったら、その後暗黒の大学時代に突入して、就職するまで行くことが出来なくなってしまったわけだった。
大学時代の何が暗黒って、生来の神経過敏なところが突出してしまい、何もかもが怖かった。だいたい、歯医者どころか注射器が怖くて病院に行けなかったぐらいなので。注射をすると思って針を思い浮かべるだけで背中がゾッとして頭を抱えたくなるというような具合。大学で予防接種とかなくてよかった。あったら登校できなくなってたかも。
それに医者に行くことは命を預けるということなのに、どの医者に行けば失敗がないかということは行かないとわからないということが既に怖くて怖くて、最初の一歩を踏み出せずにぐるぐるぐるぐる悩みだけが深まる一方。これは医者に限らず、何事に対しても石橋を叩いた挙句ぶち壊すみたいな日々で、若者なのに何事にもチャレンジするということが出来ず、それなのに、負けず嫌いなので、そんな自分に憤りを感じて、ぐちゃぐちゃな気分の学生生活だった。それでもひきこもったりせずに大学には通っていたので、どこか抜けていてのんきなところもあるんだろうなと自分で思う。それと家族関係を含む生活環境に恵まれていたおかげだと思う。
再び歯医者に通い始めたときは長期にわたって根気よく通って、懸案の虫歯はキチンと治した。その時に親知らずがちゃんと生えていないので抜いた方がよいと言われたけれども、親知らずの治療については人からいろいろな話を聞いていたので、さすがに怖くて出来なかった。ひとつ懸案事項が解決するとおっかけて別の懸案をかかえることになるのだなぁと思いつつ、そのまま。
その後、この人にならお任せしてもと思える歯科医に巡りあって、結局親知らずを全部抜いた。もともとあごが小さい上に、乳歯のときに虫歯だらけだった影響もあって、わたしの歯並びはひどいことになっている。親知らずは上の歯は半分外を向いて生えており、両方とも既に虫歯だった。でも上の歯は、初診で就業中に抜け出して行った時にいきなり抜かれて、職場に戻って「歯、抜いてきた」と言って驚かれたり。問題は下の歯で、左右両方とも完全に寝た状態で生えているのを切開して抜くので、噂どおりあごが外れるかと思うような激しい治療だった。腫上がって痛みに転げまわったりもしたけれども、なんとか無事に終わり、歯に関する全ての懸案を解決した。その時にきちんとブラッシング指導を受けて、以後、定期健診にも通い始めて今に至るのであった。ブラッシングも初めの頃は面倒だったけど、わたしの場合、虫歯だけではなく歯周病にもなりかけで、その頃歯茎の出血がひどかったのが、ブラッシングを始めてすぐにピタッと止まり、効果がてきめんだったのでヤル気が出て、慣れてしまうと、今ではしないと気持ち悪い。歯間ブラシの類も三種類ほど使用してせっせと磨いてます。
なぜに、就職二年目に突然歯医者に行くことができたかを書こうとすると、別の要素も絡んで人生の転機にかかわる長い物語になるので、また改めて…。もっと端的に短いエピソードで伝えたいことをエッセンスとして伝えられたらと思うけれども、とりあえず、気になっていることについては時々、自分史的に羅列していこうと思います。